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ADPが副腎髄質細胞の機能を調節するメカニズムを解明

掲載日2024.01.19
最新研究

農学部 共同獣医学科
准教授 横山 拓矢
獣医組織学

概要

岩手大学農学部 横山拓矢准教授らの研究グループは、ラットの副腎髄質において支持細胞が細胞外のアデノシン三リン酸(ATP)をアデノシン二リン酸(ADP)に分解する酵素を発現すること、ADPがクロム親和性細胞のカテコールアミン放出に関わる反応を抑制することを明らかにしました。以上の成果によって、これまで役割が不明であった支持細胞が間接的に副腎髄質の機能を調節していることが示唆されました。本研究成果は、2023年12月30日にJournal of Histochemistry & Cytochemistryに掲載されました。

背景

副腎髄質はストレスに応じてカテコールアミンを血中へ放出し、心拍数の増加や血圧の上昇を引き起こす内分泌器官です。副腎髄質は、カテコールアミンやATPを放出するクロム親和性細胞と、支持細胞で構成されていますが、支持細胞の役割は不明でした。
下垂体の前葉細胞や膵臓のB細胞といった内分泌細胞の機能は細胞外のADPによって調節されていることが知られており、副腎髄質のクロム親和性細胞もADPによって調節されている可能性がありました。細胞外のADPはNTPDase2によってATPが分解されることによってつくられています。しかしながら、副腎髄質のどこにNTPDase2が存在しているかは不明でした。また、クロム親和性細胞に対するADPの作用も分かっていませんでした。

研究内容

免疫組織化学染色によって、ラットの副腎髄質では支持細胞がNTPDase2、クロム親和性細胞がADPに親和性の高いP2Y12受容体のタンパク質を発現していることを明らかにしました。また、生物発光法によって副腎髄質のNTPDaseがATPを分解することを確認しました。さらに、カルシウムイメージングによって、ADPがP2Y12受容体に作用してクロム親和性細胞におけるカルシウム濃度の上昇を抑制していることを明らかにしました。

図:副腎髄質の免疫組織化学染色像。緑色はNTPDase2を発現する支持細胞、赤色はクロム親和性細胞、青色は細胞核を表す。

研究成果

支持細胞にNTPDase2が発現していることは、支持細胞がクロム親和性細胞から放出されたATPをADPに分解していることを示唆しています。一方、クロム親和性細胞にP2Y12受容体が発現していることは、ADPがクロム親和性細胞に作用していることを示唆しています。さらに、カルシウムイメージングの結果は、ADPがクロム親和性細胞からのカテコールアミン放出を抑制していることを示唆しています。以上の結果から、支持細胞はATPをADPに分解することによって、間接的にクロム親和性細胞の内分泌機能を負のフィードバック調節していることが考えられます。

今後の展開

カテコールアミンは心拍数や血圧、血糖を調節する重要なホルモンです。クロム親和性細胞のカテコールアミン放出を調節する機構を明らかにしていけば、血液循環の制御機構や高血圧症などの病態機序を解明することができると考えています。

掲載論文

題目:ADP-mediated modulation of intracellular calcium responses in chromaffin cells: the role of ectonucleoside triphosphate diphosphohydrolase 2 on rat adrenal medulla function
著者:Satsuki Maesawa, Takuya Yokoyama*, Wakana Sakanoue, Yoshio Yamamoto, Masato Hirakawa, Hirohisa Shiraishi, Kenichi Sato, Tomoyuki Saino (*:責任著者)
誌名:Journal of Histochemistry & Cytochemistry 72(1):41-60, 2024
公表日:2023年12月30日
DOI: https://doi.org/10.1369/00221554231221872

本研究は、文部科学省科学研究費基金?基盤研究(C)(課題番号22K06813、研究代表者:横山拓矢)の成果の一部として得られました。

本件に関するお問い合わせ

農学部 共同獣医学科
准教授 横山拓矢
019-621-6825
ytakuya@iwate-u.ac.jp